和包丁(片刃)のこだわり-精密成型-_Nenohi Record Vol_3

前回のNenohi Recordでは、片刃の刃の構造について、ご説明いたしました。
子の日では、片刃のメリットを最大に活かすために、「精密成型」を製作工程に導入しております。
今回は実際に精密成型した刃としていない刃を3Dスキャンデータで比較しながら、子の日のこだわりをお伝えしていきます。

前回のNenohi Recordをご覧いただくとより分かりやすい内容になっております。
まだご覧になっていない方はこちらから。


【子の日の精密成型とは】

精密成型というと機械的な印象を受けると思いますが、子の日の精密成型は、子の日のエース職人によって"100%手仕事"で行われています。
自動機械では加工が出来ない繊細な鋼材を機械加工にも負けない緻密な精度に削り出すという、手仕事の極みです。
一つのミスで作り上げた全てが無駄になってしまうような高難易度の研磨作業を繰り返し、鏡面仕上げ付近まで砥石を使い、美しい形を作り上げます。
*バフで磨く工程は形が崩れるため、最終段階でごくわずかにしか使用しません。
これが子の日の精密成型です。

【精密成型をする理由】

①切れ味を良くするため

食材を切る際に、包丁側面の余計な凹凸による摩擦(抵抗)が無く、切れ味に大きく影響します。

②丈夫で先の軽い刃にするため

包丁の余分な重量を「正確なスキ(凹み)」によって削ぐことができます。
刃の丈夫さを保ちつつ、特に切先(先端)が軽くなるので、自分の手の延長のような感覚で、長時間包丁を扱うことができます。

③研ぎを簡単にするため

使い始めから正確な刃がついているため、なぞるように研ぐだけで正確な刃付けができます。
形が崩れないので、無駄な研ぎ時間を省くことができます。

④見た目を美しくするため

誰が研いでも、美しいシノギ、裏押しを維持できます。

【精密成型のあり・なしの比較】

今回、精密成型を行った刃とそうではない刃を3Dスキャンでデータを取得しました。
実際に精密成型のあり、なしではどのくらい刃の面に違いがあるのか。その違いによってどのような影響があるのか、解説いたします。

【平面】

精密成型を行った刃には平の中央に「正確なスキ」があります。
このスキにより、シノギラインを綺麗に維持できます。
※平が正確でないと、正しい研ぎをしているのにシノギが真っ直ぐに決まらない、といった現象が起きてしまいます。

【裏面】

精密成型を行った刃には裏の中央に「正確なスキ」があります。
このスキにより、美しい裏刃を維持できます。「刃線」が崩れないので、常に包丁の性能を引き出すことができます。
※裏のスキが正確ではないということは、刃に厚い部分、薄い部分が混在、つまり切れの悪い部分と刃がもろい部分が混在するため、切れ味に悪影響が生じてしまいます。

【切れ刃面】

精密成型を行うことで最初から最高の切れ味を体感できます。砥石で研ぐ際に、すぐに全体が砥石に当たりますので、均一に研ぐことができます。
最初から包丁本来の切れ味を知っておくことで、維持すべき目標の性能が明確になります。
※成型されていない切れ刃は砥石に均一に当たらず、研ぎ時間が長くなってしまいます。



子の日では包丁の製造工程の中でこの「精密成型」を取り入れることで、美しく、性能を最大限に引き出した包丁の製造を実現しております。
また、お客様のお手元に届いた後もお客様ご自身のメンテナンスが簡単になるという点も、精密成型の大きなメリットと言えます。

この精密成型を経て、柄付けを行った後、和包丁が完成します。
次回は、最終工程である「柄付け」にフォーカスして解説していきます。
子の日の和包丁は最後の最後まできめ細かいこだわりが詰まっているので、次回も是非ご覧ください!