特注柄製作の歴史_Nenohi Record Vol_5
子の日の特注柄は今や数多くのデザインがあり、国内外多くのお客様から日々お問い合わせ、ご注文をいただいています。
近年では人前で包丁を使う機会が増えていることから、美しさも包丁に求められる性能の一つになり、特注柄の需要が伸び続けています。
子の日では25年前に「特注柄」の自社製作を始めました。
現在の特注柄に辿り着くまで、多くのユーザーから使用感を聞き、試行錯誤を続けてきました。
また、25年経った現在も更なる包丁の使い易さ・素材・デザインを追求し続けています。
今回は子の日の特注柄の歴史を振り返り、過去と現在の違いをお楽しみいただければと思います。
【研究期】
子の日初期の業態は、自社で刃の研ぎ・細部磨きを行ってから「仕入れた柄」を取り付けて、ユーザーに納めていました。
事業を続けていく中で、包丁の使い勝手、握りやすさを追求し、さらなる付加価値を高めて欲しいというユーザーの要望に応えるため、「刃に合わせた柄」を自社で製作することが求められました。
包丁も柄も個体差がありますから、「包丁」と「柄」を別々に作ってから最後に組み合わせるとどうしてもバランスや細部の隙間など、不一致感が出てしまうのです。
それは高品質を求める子の日の理念にとって許されないことでした。
そこで当初、外部の作家さんに依頼していた柄の伝統的なデザイン(外観、材料)や構造を踏襲して「自社製作」する研究を始めました。
当初は下記の写真のように、黒檀/カリンに象牙・水牛・総銀を巻いたものが特注柄の主流でした。
【開発期】
今までベース材が黒檀の特注柄が主流でしたが、デザートアイアンウッド、スネークウッド、本黒檀などをベース材に導入し、「天然素材」の選択肢を増やしました。
この頃から、既存の特注柄を踏襲するだけではなく、より材料の選定や造り方に自社の色が入り始めます。
天然素材を増やすことで、各素材によって硬さや変化の仕方、節の有無といった、素材によって加工や保管方法を変えたり、素材の模様の出方を考慮した製作など、より繊細な作業と材料管理が求められました。
【成長・挑戦期】
ここで子の日は「性能特化主義」という方向に舵を切ります。
包丁に柄を取り付けたトータルバランス、持ちやすさを重視したデザインへの変更を行います。(具体的には、柄尻から口にかけて絞り(テーパ)を付ける、八角形の幅を調整する等)
柄のデザインの変更に伴い、銀の幅や着脱式の目釘周りのリングの形状、口尻の長さなど、細部のデザインも変更しました。
(左:旧デザイン/ 右:刷新デザイン)
また、新たなベース材として、人工素材には洋包丁で実績を積んできた「デュポンコーリアン材」を導入を開始しました。
元々使用していた天然素材の材料は規制などにより入手が厳しくなってしまったこと、そしてお客様から色使いがあるベース材の要望があったことにより「デュポンコーリアン材」の採用を決定しました。
衛生面で問題がなく、経年変化もないことから「10年後でも見た目と性能を損なわせない」という点でも子の日が求める条件に合致した材料でした。
そして、デュポンコーリアン材を導入したことで「白色の柄」の製作にも挑戦することができました。
白色の材料は加工が難しく、かつ接着面の隙間や加工の際に出るゴミの詰まりが目立ってしまうという難しさがあります。ほんのわずかな精度不足がもろに目に見えてしまうのです。
しかし、子の日では従来から繊細な特注柄製造を行う技術を追求していたため、上記のような問題を難なくクリアすることが出来ました。
一般的に特注柄のデメリットは、ベース材(黒檀などの木材)と装飾の金属部分とのギャップ(段差)が、大きくなり、使いづらく、見た目も悪くなってしまうことが挙げられます。しかし、子の日は素材の収縮率をある程度コントロールすることが出来るようになりました。
素材の組み合わせや加工により、人工素材であればほぼ完全にギャップは出ず、たとえ天然木でもギャップを最小にすることを実現しました。
【現在】
現在ではベース材に「カーボンファイバー材」などのハイテク素材をはじめ、他にもお客様の選択肢が更に増えています。
全体のデザインについては、仕上がった刃の長さ、幅、形状に合わせて柄の太さ、銀リングの太さ、口尻の幅等をそれぞれ変えています。また、お客様のご要望に合わせて、柄の太さを変更することもできます。
これまで試行錯誤してきた結果として、現在のような完成した包丁に最もマッチする、かつお客様のご要望に沿った「ワンオフ(1点物)特注柄」の製作が実現できるようになりました。
長年経った現在でも、全て職人の手作業でなければ子の日クオリティにはたどり着けません。世界中から沢山のご依頼をいただいているにも関わらず製作できる数量は月産わずか10本~12本のみです。
そんな現在の特注柄製造のこだわりについては、次回のブログでご紹介していきたいと思います。