現在の特注柄製作のこだわり_Nenohi Record Vol_6

前回のNenohi Recordでは子の日の「特注柄製作の歴史」として、現在の子の日の特注柄製造が確立するまでの道のりを遡りました。
今回は、「現在」にフォーカスを置いて、細部の特別なこだわりを皆さんにお伝えしていきたいと思います。


1. 刃に合った柄の製作

- 完成した刃に合わせた柄製作

子の日の特注柄は刃が完成した後に製作を開始します。刃は特注品包丁のため、お客様のご注文によって形状はもちろん、幅や厚さが異なります。様々な種類の包丁一つ一つに合った最適なバランスになるよう職人が調整しながら製作していきます。お客様のご要望に応じて柄の太さを変えるなど、お客様の理想を叶える柄の製作も可能になりました。

- 刃と柄の一体感

刃の中子と柄の間の隙間を少なくするために、二分割されたベース材を中子の形状に沿ってくり抜いています。(最終的に二分割されたベース材を接着します。)

このような高精度の加工により、包丁と柄を取り外しできる「着脱式」の特注柄の製作が可能になります。
着脱式でない場合でも精度の高い加工は包丁と柄を理想的な位置に固定することができ、「包丁をこの位置で握って欲しい」という職人が意図する「包丁と柄の一体感」を生み出すことが出来るのです。

2. 材料の選定

- 純銀の使用

子の日では「純銀」を使用しております。銀が99.9%含まれているもののみ「純銀」と呼ぶことが出来ます。
純銀を採用する理由は、見た目の美しさです。特注品包丁という高価な包丁にふさわしい材料です。
純銀を「板材」の状態で仕入れ、一つ一つの柄の形状・太さ、柄のデザインのバランスに応じて板材を加工しているので、ワンオフ(1点物)の特注柄製作が実現できます。

- 選択肢の多いベース材

Nenohi Record vol_5でもご紹介したように、子の日はベース材に天然素材以外の材料を早い段階で導入してきました。人工素材やハイテク素材のメリットは「経年変化が極めて少ない」ということです。これらの材料の採用もお客様の「使いやすさ」を叶えたいという職人たちの思いから実現することが出来ました。

現在ではベース材の選択肢が10種類以上もあり、口尻の素材やリングの数を変えると何通りもの組み合わせが可能になります。使い手の嗜好に応じて複数のデザインをご提案出来るのは、大きな強みだと実感しております。

ベース材の研究は現在でも進めており、この度、洋包丁でも人気がある「ドライシルバー」の材料も選択できるようになりました。

材料によって加工の難易度が異なり、新しい材料を採用する前にも何度もトライ&エラーを繰り返しています。このように新しい材料の採用が出来るようになるのも、一工一進」を繰り返す職人の努力の賜物だと言えます。

3. 使いやすさを追求した形状

子の日の柄は、握りやすさや手のなじみ、刃の使いやすさを優先した、柄尻から口にかけて絞り(テーパ)をつけた、八角柄を採用しています。
八角柄の形状は、包丁を毎回確実に「いつもの刃の角度」で握ることができ、包丁使いを極めるために必要な要素と考えております。
刃の形状や長さに応じて、職人が柄の絞りや太さを微調整しているので、美しく絶妙なバランスの特注柄が仕上がります。


ご覧いただいた工程は、子の日の特注柄製造のあくまでも"ごく一部"です。実際には職人が材料の切り出しから、加工、成型、接着...全てを手作業で行っております。
子の日の特注柄製作についてお届けして参りましたが、過去も、現在も変わらないのは、『使いやすさ、上質な素材と厳選した材料、丁寧な手仕事による作り方に基づき、デザインが成り立つ、いわば「機能美」を追求した特注柄製作を行っている』ということです。

「神は細部に宿る」とは巨匠ミース・ファン・デル・ローエの名言ですが、ご覧いただいたように子の日も作品に対して細部に特別なこだわりを持って製作しています。
一般的な写真では表現できない程のディティール(細部)に至るこだわりが子の日の本質であるクオリティに繋がっていると確信しています。是非一度、手にとってじっくりと実物をご覧ください。きっと心が揺さぶられるはずです。