洋包丁(両刃)のこだわり_刃の構造とハンドル造り_Nenohi Record Vol_7

子の日は長年、和包丁の製作において和食の料理人から高い評価を得てきました。
そのような中、和包丁のシビアな切れ味を体感している料理人のお客様から「子の日の切れ味を活かした洋包丁も欲しい」という声が寄せられるようになり、子の日は特別な切れ味を持つステンレス鋼の研究に踏み出します。その研究の末に誕生したものが、子の日の洋包丁を代表する「NENOX」シリーズです。
製品化から30年。多くのアップデートを経た現在では、NENOXは世界中のトップシェフに愛用される人気シリーズとなりました。そんな洋包丁製造にも細部のこだわり、職人の手仕事でしか出来ない技術が詰まっています。

今回は子の日の主力製品の一つである洋包丁製造のこだわりを二部に分けて、解説していきます。


刃の構造

子の日の洋包丁の最大の特徴は「ソリッド構造」、つまり全てが切れる鋼材で構成されている点です。
ソリッド構造は、包丁の使用中に「曲がらない」、「正確な形状を維持し続ける」特徴があるため、精度の高い包丁造りによって生み出される理想的な切れ味が変わることなく持続します。

NENOXに関しては、
切れ味(研ぎが正確に決まる、食材への摩擦が減る)」、
耐久性(曲がらない)」、
メンテナンス性(前回の研ぎ形状が維持されている[連続した研ぎが楽])」
という性能を兼ね備えています。
加えて、刃の切れる部分だけではなく、鋼材が刃の先端から後端(ハンドルの部分)まで1枚の鋼材で構成されるフルタング構造」を採用しているため、ハンドル部分まで強度が高く衝撃に強い構造となっているのも大きな特徴と言えるでしょう。

一方で、上記のような切れ味と性能を追求した刃は、繊細で、製造上特有の「難しさ」が存在します。そこで子の日では独自の製造方法を研究し、導入することで、その「難しさ」を克服し、理想的な切れ味を実現する包丁造りを可能にしているのです。
上記で述べた「難しさ」とはどのようなものか、難しさを克服した「独自の製造方法」とは何なのか、これから具体的に解説していきます。


ハンドル組み

切れ味を追求した繊細な刃は、溶接による熱を加えてしまうと、性能劣化や破損する危険性が高くなります。そのため、ハンドル付けの工程では溶接での加工を一切行わず、"職人の手仕事"によってハンドルを組み上げていきます。
NENOXのハンドルのパーツの数は、下記の写真通り、全16パーツにも及び、パーツ同士を組み合わせるだけで15工程以上もの工程があります。

溶接加工を行わないため、刃とハンドルの間の隙間がないように組み上げる必要があります。ハンドル部分に隙間があると、そこから水が入り込み、サビや耐久性に悪影響を及ぼしてしまうのです。
ハンドルのパーツとパーツを取り付ける部分が「完全な平面」になるように精密に研磨し、平面になったパーツやハンドル素材を洋白製の特殊なボルトで固定することにより、完全に隙間のない実用的で美しいハンドルの基礎が出来上がります。
これらの工程は職人の手仕事でしか実現できない、極めて高い難易度である言えます。


ハンドル磨き

隙間なく接着されたハンドルは最後まで”職人の手仕事”によって仕上げていきます。
ハンドルを製作するためだけに開発された独自設計のマシンを駆使し、殆どを曲面で構成されたハンドルの形状へ成形していきます。曲面で構成されたハンドルは、握った時に包丁が手のひらに吸い付いていくかのような手馴染みのよい使用感を得ることができます。

ハンドル形状は完全に職人の経験と感覚に基づいて行われいるため、複数の職人が手を施しても均一な仕上がりになるよう、職人同士の研究会を定期的に行っています。

ソリッド構造の切れ味を追求した洋包丁」を作り上げるためには、このように刃もハンドルも熟練した職人による手仕事で行う必要があり、膨大な製作時間を要します。このような丁寧な製法が、NENOXの生産数を自ずと限りがあるものにしているのです。

「職人の技術」というと和包丁の印象が強い方もいらっしゃると思いますが、ご覧いただいたように、子の日は洋包丁でも職人の技術が詰まっています。
30年もの長い歴史の中で、刃の性能、ハンドルの形状、材料、組み上げ方...の全てにおいてトライ&エラーを繰り返し、現在の子の日の洋包丁が確立しています。
次回は現在進行形で開発が進んでいる、「ハンドル材」と「ハンドル形状」についてお届けしたいと思います。